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ペダルの重さが腿を強張らせて、漕いでも漕いでも中学生の体力では、遠く横たわるその懐までは半分ほどしか近づけない遠い山だった。 親父の目を盗み走り出したBSチャンピオン50は易々と領域を超え、山道の行き止まりまで辿り着いた。自転車なら長く続く下り坂でしか見えない速度の恐怖にちょっとしたカーヴさえ振り落とされまいとしがみ付いた。 息を切らして漕いだ山道、砂埃りの中を駆け上がった砂利道。走り続ければ無限に思えるほど広がった空間は自由への匂いと既成への反発を教えた。 遥かなる山影の記憶はススキの原を彷徨った。 |
蓬莱山から |
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